サンタクロースの部屋

hitomisirisiri2006-12-24

スーパーでだだをこねていた子どもにお母さんが「言うこと聞けへんかったら、
もうサンタさんが来ないよ!」
クリスマス前になると、よく聞かれる脅し文句だ。
 

沖縄に住んでいたとき、「サンタクロースの部屋」という絵本の勉強会に
参加していた。なぜ、こんなサークルの名前になったかという説明の文章を
今も大切にもっている。

松岡 享子著「サンタクロースの部屋」より
 12月にはいると、街はもうおきまりのクリスマス風景。
「ああ、またジングルベルの季節がきたか」とおとなたちは思い、
子どもたちの多くは、やはりサンタクロースのことを考える。(中略)
 もう数年前のことになるが、アメリカのある児童文学評論誌に、次のような
一文が掲載されていた。
「子どもたちは、遅かれ早かれ、サンタクロースが本当はだれかを知る。
知ってしまえば、そのこと自体は他愛のないこととして片付けられてしまうだろう。
しかし、幼い日に、心からサンタクロースの存在を信じることは、
その人の中に、信じるという能力を養う。わたしたちはサンタクロースその人の
重要さのためでなく、サンタクロースが子どもの心に働きかけて生みだす
この能力ゆえに、サンタクロースをもっと大事にしなければいけない」というのが、
その大要であった。(中略)
 
心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、
サンタクロースを収容する空間をつくりあげている。
サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。
だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。
この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、
ここに迎えいれることができる。

  この空間、この収容能力、つまり目に見えないものを信じるという心の働きが、
人間の精神生活のあらゆる面で、どんなに重要かはいうまでもない。のちに、
いちばん崇高なものを宿すかもしれぬ心の場所が、実は幼い日にサンタクロースを
住まわせることによってつくられるのだ。・・・

 この時季になると、この文章の趣旨をいっしょに共感した仲間を懐かしく
思い出す。

夕方、次男が思い出したように玄関の掃き掃除を始めた。「玄関が汚れていると、
サンタさんがうちに寄ってくれないでしょう!」だって。